毎日長時間使う枕は、良質な睡眠と健康のためにも、自分の体にフィットするものを選ぶことが大切です。しかし、枕の種類は豊富なため、どうやって選べばいいのか分からない人も多いのではないでしょうか?
この記事では、枕の正しい選び方について詳しく紹介します。ぜひ枕選びの参考になればと思います。
Contents
枕の役割とは?
人間の脊柱は、S字を描くようなカーブになっています。重い頭や体重を無理なく支えて体にかかる負担を最小限にするためには、脊柱がS字になる姿勢を保つ必要があります。寝たときに体への負担が少ない姿勢を作るためには、脊柱に合うように寝具と首の間にできる空間を埋められる枕を使用することが重要です。

適切な枕とは?
脊柱がS字になるように、寝たときにも自然に立った姿勢を保つことが理想です。その姿勢であおむけに寝ると首と寝具の間に1~6cm程度のすき間ができるため、そこを埋める十分な高さを持つ枕が適しています。また、横向きに寝たときに首の骨がまっすぐになる姿勢を保つためには、枕に肩幅程度の高さが必要です。

頭だけでなく肩上部まで枕に乗るようにするのが、枕の正しい使い方です。自分の体にマッチする高さの枕を選ぶためには、実際に寝て試してみましょう。
合わない枕を使っているっとどうなる?
体に合わない枕を使い続けていると、さまざまな体調不良の原因となります。最も多い症状は肩こりや首こりです。枕の高さが合っていないと寝ている間、肩や首の筋肉が緊張した状態が続き、肩こりや首こりが起こります。

また、体に合っていない枕の使用で首が圧迫されると、交感神経が緊張状態になります。脳への血流がスムーズにいかなくなった結果、頭痛が発生することもあるのです。さらに、枕が高すぎる場合はあごを引いた姿勢になってしまい、気道が圧迫されていびきの原因にもなります。背骨にも負担がかかり、腰痛を引き起こすこともあるでしょう。
枕の選び方とは?
枕選びのポイントは、枕の高さ・大きさ・素材・形の4つです。最適な枕を選ぶために、どのような点に気を付ければよいのかそれぞれ解説します。
枕の高さ
前述のとおり、寝たときに脊柱のS字カーブを維持できる高さの枕を選ぶことが大切です。性別や体型、睡眠中の姿勢があおむけか横向きかなどによっても、楽な姿勢をキープできる高さが異なります。
性別に合わせて選ぶ
一般的に男性は頭を乗せたときに2~5cm程度の高めの枕を選んだほうが、快適に感じる傾向があります。それに対して、女性は使用したときに1~3cm程度の低めの枕のほうが快適だと感じやすいようです。これは、男性と女性では頸椎弧(首の深さ)が異なり、女性には頸椎弧が浅い人が多いためです。
体格に合わせて選ぶ
日常的に運動をよくしているなど、頑丈な体格の人は脊柱のS字カーブもしっかりとしている場合が多いため、高さがある枕がおすすめです。一方、女性や子どもなど体格がほっそりとしている人には、低めの枕のほうが体にフィットしやすいといわれています。自分の体格も高さを選ぶ際の参考にしましょう。
寝る時の癖で選ぶ
寝たときにあおむけの姿勢をとることが多い人もいれば、横向きで寝ることが多い人もいます。寝るときの癖には個人差があるのです。そして、どちらの姿勢をとるかによっても、適切な枕の高さは異なります。
あおむけで寝る人には、側面から見たときに首のS字カーブが保たれる高さの枕が向いています。一方、横向きで寝る人には、寝たときの首の骨を床と並行に保てる高さの枕が適切です。
枕の大きさ
枕にはさまざまな大きさの商品展開があり、体格や好みで選び方も異なります。ここでは、枕の大きさごとに、それぞれの特徴を紹介します。
・Mサイズ(43×63cm)【標準サイズ】
Mサイズは一般体型の日本人の肩幅を基準とした標準的な大きさの枕であるため、商品の種類が最も多く出ています。デザインや素材などの選択肢が多く、好きなものを選びやすい点がメリットといえるでしょう。
・Lサイズ(50×70cm)
Lサイズの枕は標準的なMサイズよりも一回りくらい大きめです。頭から肩上部までをしっかりと乗せることができるため、ゆったりと包まれるような寝心地を楽しめる点がメリットといえます。ホテルなどでよく使用されている枕のサイズは、Lサイズが多いようです。
・セミロングサイズ(43×90cm)
セミロングサイズの枕は奥行が標準のMサイズと同じですが、横幅がLサイズよりもかなり大きめになっています。そのため、ゆったりとした寝心地を求める人や、寝返りを頻繁にする人などにおすすめのサイズです。
・ロングサイズ(43×120cm)
ロングサイズの枕の奥行も標準のMサイズと同じですが、横幅が非常に長くなっており、2人で一緒に使うことを想定して作られています。左右に何度も寝返りをする人も、ロングサイズなら頭が枕から外れることがないためおすすめです。
枕の素材
枕の素材には非常に多くの種類があり、頭部を乗せたときの硬さや感触など、個人の好みに合わせて選ぶことができます。
ダウン(羽毛)
水鳥の羽根で、寒い時期は暖かく、暑い時期は涼感があります。天然素材ならではの通気性や吸湿性、発散性があり、フワフワとした柔らかさも特徴です。
パイプ
短いストローのような形の素材で、柔らかさやサイズの種類もさまざまです。通気性に優れており、家庭で洗濯することも可能なため、衛生的に使用できます。また、へたれにくいため、長期間の使用にも耐えられます。
低反発ウレタン
スペースシャトルの宇宙飛行士用に開発された新素材で、マシュマロのようにモチモチとした弾力と触り心地があります。体圧分散性や柔軟性に富み、体型や寝るときの姿勢に合わせてフィットするところがメリットです。
スノー低反発
ウレタンをスノーフレークのように細かくした素材で、復元性に優れています。ウレタン素材ならではのモチモチとした触感とダウンのようなフワフワとしたフィット感が特徴です。また、低反発ウレタンよりも蒸れにくい素材となっています。
高反発ウレタン
高反発ウレタンはラテックスとも呼ばれます。通気性が良く、気温による変化も少ないことが特徴です。弾力性が強いだけでなく柔らかさもあり、スムーズに寝返りをうてるところがメリットといえます。
ムアツ
「点で支えるムアツふとん」で有名な「昭和西川株式会社」と、まくら専門メーカー「まくら株式会社」が共同開発した素材です。凸凹構造によって頭の重量が分散されるため、圧迫感や頸椎への負担が少なく、血行を妨げない点がメリットです。
ポリエステルわた
フワフワとした触感やクッション性を持つ素材で、柔らかい枕に仕上がります。なかでも、特殊加工された「コンフォロフトわた」は通気性とクッション性の高さが特徴です。また、粒状のポリエステルわたである「粒わた」は反発性が抑えられ、柔らかさが増しています。
クラッシュラテックス
ナチュラルラテックスと合成ゴム(シンセティックラバー)を細かく砕いた素材です。高反発性と弾力性に優れている他、フワッとした柔らかめの感触やフィット感も魅力となっています。
ビーズ
発泡スチロールを超極小にした素材です。頭の形に合わせて自在に形を変えるため、フィット感に優れています。また、ビーズならではのユニークな触り心地も特徴です。
コルマ、ミニボール
内部が空洞になったプラスチックボールで、大きな穴が2つ空いているため、通気性に優れた素材です。直径約1cmの玉が集まることによって高い柔軟性や流動性、クッション性を実現しており、頭によくフィットします。
そばがら
そばの実の殻を乾燥させた天然素材で、日本では古来より枕の素材に活用されてきました。高い通気性と吸湿性を備えた素材のため、頭からの熱を発散して汗を吸収します。
枕の形
枕には長方形以外にもさまざまな形があり、それぞれにメリットがあります。ここでは、5つのタイプを紹介します。
標準・長方形型
枕として最も一般的な形は長方形型で、選択肢が豊富にあることが長方形型のメリットです。商品のバリエーションも非常に多いため、自分の好みや目的に合わせて高さやサイズ、素材やデザインを選ぶことができます。
波(ウェーブ)型
側面から見ると波のように高さの差がある形が波(ウェーブ)型枕です。このタイプには頸椎弧(頭と首のカーブ)にフィットするようにS字型になっているものや、低反発素材で作られている製品が多くあります。
ハート型
ハートをさかさまにしたような形をしており、首周りのボリュームを減らすことによって首に負担がかからないように設計されています。肩こりや首こりに悩む人にもおすすめの形です。ハート型枕には一般的に低反発素材が使われています。
頸椎支持・横向き対応型
枕の中身が分割されており、各部分の素材の量を変えることによって高さを調整できるタイプです。枕の裏表や上下を変えることで、体型や好みに合った寝心地を選べるものもあります。製品によって、横向き寝や寝返りのしやすさなど、さまざまな工夫がされています。
【その他】抱き枕
抱き枕は一般的な枕とは違い、寝るときの姿勢をサポートする目的で使用します。1mくらいの長さがあり、抱き着いたり足に挟んだりすることによって、最も快適な姿勢をとれるようになります。横向きで寝る人や妊婦におすすめです。
枕を交換する目安は?
枕は消耗品のため、しばらく使用すると本来の機能を失っていきます。素材の劣化によって、弾力性やボリュームが落ち、寝心地が変わるからです。快適な姿勢をとれなくなったと感じたタイミングで、新品に交換するのがよいでしょう。
枕がどれくらいの期間使用できるかは素材によって違いますが、そばがらは1~2年、パイプは3~5年、その他の素材なら2~3年程度が目安です。
枕の正しいメンテナンス方法は?
枕には頭皮や頭髪から出る汗や汚れが付きやすいため、定期的に手入れをしないと雑菌やダニが発生したり、頭皮のにおいの原因になったりします。手入れの方法は枕の素材によって異なり、自宅で洗濯できるものとできないものがある点に注意が必要です。
一般的にはビーズやパイプといったプラスチック素材の枕なら洗濯機や手洗いで洗うことができます。それに対し、そばがらや羽毛といった天然素材のものや低反発のものは家庭で洗うことができません。洗えない素材の枕の場合は、週1回を目安に陰干しをするとよいでしょう。
まとめ
枕には脊柱に負担をかけない寝姿勢を維持する目的があり、健康のために体に合った枕を選ぶことが大切です。
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